2017年1月4日水曜日

第4回『プロ競輪選手の同級生H君の話』


同級生にプロ競輪選手のH君がいる。彼は毎年年末に行われるプロ競輪新人選手のビッグレース、ヤンググランプリに出場した事がある程の一流選手だ。


小学生の頃、家も比較的近かった事もあり鹿児島の田舎道を彼とよく自転車で走った。普通はブレーキをかけるような結構な下り坂をブレーキをかけるどころか逆にペダルを踏み込み、更に加速しながら、坂道を下って行くH君をやけに覚えている。H君がプロ競輪選手になったと聞いた時、天職だ、と思った。


そんなH君とつい先日、実に約20年振りに再会する事が出来た。突然H君から「今日会いに行ってもいいかな」と連絡が入り、その日の夜、神楽坂のダンススタジオを訪れてくれたのだ。


久しぶりに再会したH君は勝負の世界で生きているとは思えないくらい昔と変わらない穏やかな人柄だった。だがそこは一流アスリート、闘志は内に秘めるタイプなのだと思う。(自分も同じく内に秘めるタイプだからなんとなくわかる。)


その日富山で競輪のレースが終わってその足で自分に会う為東京へ来てくれたようで「前もって連絡してくれたらよかったのに。」とH君に言ったら、レースで万が一、落車などしてケガをして来れなくなったら悪いから、と思ってあえて前もって連絡しなかったそうだ。


体を張った厳しい世界で生きているんだな、と思うと同時に、H君の優しい心遣いを感じた。

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さて、スタジオでH君と久しぶりの再会の喜びを分かち合った後、その日はラッキーな事に夜レッスンが空いていたので場所を変えて夕食を食べながら沢山話をする事が出来た。


懐かしい昔話から、競輪の話やダンスの話、あいさつや礼儀の話まで色んな話をしたのだが、その中で非常に興味深い話があった。


H君曰く自転車のペダルを漕ぐ時、脚だけでペダルを漕ぐのではなく、肩甲骨を緩めて肩甲骨から脚部への連動でペダルを漕ぐそうだ。競輪用語では全力でペダルを漕ぐ事を”もがく”と言うらしい。なるほどそう言われるのも納得出来る。


ダンスでも肩甲骨はかなり重要だ。自分はルンバウォークの時、肩甲骨を自転車のペダルを逆漕ぎするイメージで動かす。生徒にもルンバウォークの肩甲骨の動きは自転車の逆漕ぎだよ、と以前からレッスンで教えて来た。だからH君の話を聞いた時、ルンバウォークと一緒だ、とすかさず思った。


やはり人間の身体能力をフルに発揮する為には同じ身体の使い方になるという事なのだろう。自転車とダンス、一見全く違う物のように思えるスポーツでも、身体の使い方の共通点を発見出来たのは嬉しかった。


自分は一足先に選手を引退して今は審査員をしてる。ジャンルは違うが現役で頑張っている同級生H君のさらなる活躍を心から願っている。


(第4回  ダンスのキセキ)

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